歳時記 夏 五月

時候

( なつ )  三夏

三夏 ( さんか )   九夏 ( きゅうか )   炎夏 ( えんか )   炎帝 ( えんてい )   朱夏 ( しゅか )

立夏(五月六日頃)から立秋(八月八日頃)の前日の期間を「夏」、「月」なら五・六・七月を夏という。「三夏」は初夏・仲夏・晩夏の総称。「九夏」は「夏期九十日間」の総称をいう。

立夏 ( りっか )  初夏

夏立 ( なつた ) つ  ( なつ ) ( ) る  夏来 ( なつく )

五月六日頃。夏の歩みを始める。

五月 ( ごがつ )  初夏

新緑がもえ、この月から夏に入る。

初夏 ( しょか )

初夏 ( はつなつ )   夏始 ( なつはじめ )

自然は新緑・若菜のころ。人は更衣をするころ。入梅以前が初夏のころ。

卯月 ( うづき )  初夏

( ) 花月 ( はなつき )

陰暦四月の異称、卯の花の咲く月をいう。

夏めく 初夏

夏が来たという感じ。樹木は少し緑濃くなり、衣食住の有様を見ても、夏らしい感じを帯びて来ることをいう。

薄暑 ( はくしょ )  初夏

初夏のころ、少し暑さを覚える気候をいう。

五月頃の暑さ。

( むぎ ) ( あき )  初夏

麦秋 ( むぎあき )   麦秋 ( ばくしゅう )

麦の収穫は初夏。黄熟するのでこの名がある。「小麦」は「大麦」より少し遅れて収穫する。共に初夏収穫。

夏浅 ( なつあさ ) し 初夏

夏に入って日が浅いこと。五月このと。

地理

卯浪 ( うなみ )  初夏

卯月浪 ( うづきなみ )

陰暦四月の海上に立つ波をいう。卯の花の風に吹かれて波立つをいうとの説あり。

生活

更衣 ( ころもがえ )  初夏

冬から春にかけ着用した衣を着替ええること。昔は陰暦 四月朔日 ( よんがつついたち ) を更衣とする。宮中では室礼までかえられた。江戸時代宮中にならい、陰暦四月一日綿入を脱ぐ。 ( あわせ ) なる風習が行なわれた。今日では五月一日から袷、六月一日から 単衣 ( ひとえ ) 、七月一日から 帷子 ( かたびら ) という習慣の残っている地方がある。

( あわせ )  初夏

綿抜 ( わたぬき )   初袷 ( はつあわせ )   袷時 ( あわせとき )   絹袷 ( きぬあわせ )   素袷 ( すあわせ )   古袷 ( ふるあわせ )

裏地のついた衣類のこと。昔は綿を抜いた袷を「綿抜き」といって着たものだという。今はしない。袷は初夏に入ると着る。素袷は遊女が着る。秋に着る袷は秋袷という。

白重 ( しろかさね )  初夏

卯月一日(現五月一日)に更衣する。卯の花の如く白い下小袖に更へる。これを白重ねという。現代には緑遠い。

鴨川踊 ( かもがわをどり )  初夏

五月一日~二十四日まで。京都先斗町歌舞練場で催される、芸妓の踊り。「祇園の都をどり」に対するもの。歴史は古く発演は明治五年とある。秋は十月に行う。

菖蒲葺 ( しょうぶふ ) く 初夏

菖蒲引 ( しょうぶひ ) く 菖蒲 ( ) る  ( のき ) 菖蒲  蓬葺 ( よもぎふ )

端午の節句の前夜、 ( のき ) に菖蒲と蓬を添えて葺く風習は、平安中期宮廷に起り、武家・民間に伝わり、今日に至っている。邪気を払い、火災を ( ) ける ( まじない ) であった。菖蒲のない陸奥ではかつみ( 真菰 ( まこも ) )を代用する。〝かつみ葺く゛という。

端午 ( たんご )  初夏

五月 ( ごがつ ) の節句  重五 ( ちょうご )  菖蒲の節句  菖蒲 ( しょうぶ ) の日  初節句 ( はつぜっく )

立節句の一つ。五月五日の節句。「端」は初、

「午」は五で五月初の五日の意である。「初節句」は男の子が生れて初めての節句をいう。元は中国の行事で、わが国に伝わる。平安時代宮廷の儀式が武家に伝わる。江戸幕府に於ては正式な行事。「菖蒲」を「尚武」に通じ武家社会に於て盛んとなり、民間にも広まる。儀式として命じ、明治六年に廃止。現在はこの日を子供の日として祝日。菖蒲は邪気悪霊を払う薬草の一つ、蓬も同様。

武者人形 ( むしゃにんぎょう )  初夏

五月 ( ごがつ ) 人形 五月雛  ( かぶと ) 人形  ( よろい ) 飾る  ( かぶと ) 飾る

端午の節句に飾る人形で文禄(一五九二年)以降華美となる。内幟・太刀・太鼓・鎧・冑・具足など武具を座敷に飾るようになる。人形も勇武を示すのが選ばれ、義経・弁慶・謙信・信玄・清正など。

( のぼり )  初夏

五月幟 ( さつきのぼり )   ( そと ) 幟  ( うち ) 幟  座敷 ( ざしき ) 幟  五月鯉 ( さつきこい )   ( ) 幟  ( はつ ) 幟 幟 竿 ( ざお )  幟 ( くい )   鯉幟 ( こいのぼり )

端午の節句に立てる幟で、多くは定紋を染めたものを用いる。戸外に立てる「外幟」が主であり、後に室内の内幟、座敷幟が生れる。

鯉幟は江戸中期に生れる。

吹流 ( ふきなが ) し 初夏

鯉幟と共に揚げる 竿 ( さお ) で、色は五色、紅白など

輪形に布をつけたもの。

鯉幟 ( こいのぼり )  初夏

五月鯉 ( さつきごい )

江戸中期以降に生れ「外幟」が鯉の形となる。

赤は緋鯉、黒は真鯉を竿に吹流し、矢車をとりつける。五月空に泳ぐ姿は雄大、男子の成長願う。

矢車 ( やぐるま )  初夏

矢羽根を放射状にならべ車輪のように作ったもの。竿の頂上にとりつける、一種の風車。

菖蒲湯 ( しょうぶゆ )  初夏

菖蒲 風呂 ( ぶろ )   蘭湯 ( らんとう )

端午の日、「菖蒲」を入れてたてる風呂。邪気を払い、心身を清めるという風習。室町時代に起ったとある。中国では昔蘭湯あり、それが起源らしい。

風炉 ( ふろ )  初夏

茶の湯では五月から夏用の炉に変る。「風炉」は席上の板の上に置かれ、鉄製又は土製の携帯炉で、形は丸で縁の一方がなく、そこから風を入れるようになっている。風炉を使って茶を点てることを「風炉手前」という.。五~十月まで風炉。自然の流れでは、ふじの花咲くころが最適。

苗売 ( なえうり )  初夏

初夏の頃になると茄子・胡瓜・朝顔・糸瓜・ 瓢簞 ( ひょうたん ) などの苗を売りに来る。今はホームセンター。

茄子植 ( なすびう ) う 初夏

苗床に生成した茄子苗を畑に植えかえるのは五月上旬頃である。

葵祭 ( あおいまつり )  初夏

京都三大祭(祇園祭・時代祭・葵祭)の一つ。五月十五日。京都上賀茂の賀茂別雷神社、 下賀茂の賀茂御租神社の両社の大祭。平安時代絵巻の行列が行なわれる。

( まつり )  (三夏)

祭礼 ( さいれい )   夏祭 ( なつまつり )   神輿 ( みこし )   神輿舁 ( みこしかき )   渡御 ( とぎょ )   舟渡御 ( ふなとぎょ )   御旅所 ( おたびしょ )   祭太鼓 ( まつりたいこ )   祭笛 ( まつりぶえ )   祭獅子 ( まつりしし )   祭囃 ( まつりはやし )   ( まつり )   ( かさ )  祭 ( ころも )   山車 ( だし )   楽車 ( だんじり )   祭提灯 ( さいちょうちん )   祭客 ( まつりきゃく )  祭 宿 ( やど )   祭見 ( まつりみ )   夜宮 ( よみや )   宵宮 ( よいみや )   宵祭 ( よいまつり )   祭前 ( まつりまえ )   祭後 ( まつりあと )

俳句で「祭」は京都賀茂神社の葵祭(賀茂祭)を指す。その他の夏に行う諸社の祭を「夏祭」と呼んで区別するが、今は夏に行う祭を「夏祭」と称する。祭事は神の 来臨 ( らいりん ) によって成り立つ。古来来臨は夜間に行なわれると信じられた。

この為に「夜宮」「宵宮」「宵祭」と称し、祭の前夜から神事が開始された。

安居 ( あんご )  三夏

夏籠 ( げごもり )   夏行 ( げぎょう )   夏勤 ( げつとめ )   雨安居 ( うあんご )   一夏 ( いちげ )

陰暦四月十六日から七月十五日までの三ヶ月間一室に籠って修行する、仏教の行事。

袋掛 ( ふくろかけ )  三夏

初夏に果実の害虫を防ぐため、紙袋を作って掛ける。桃五月頃・梨・林檎・柿は六月頃、女、子供の仕事であった。

綿蒔 ( わたまく )  初夏

八十八夜から遅くとも麦を刈りとるころまで蒔き終る。種子は水に漬け、藁灰にまぶし、 ( うね ) に蒔く。

菜種刈 ( なたねかる )  初夏

菜種刈 ( なたねか ) る  菜種干 ( なたねほ ) す  菜種打 ( なたねう )

初夏に、実となった油菜を刈ることをいう。刈った油菜を拡げ干し、乾いた油菜を打って、殻や ( さや ) をとる。

麦笛 ( むぎぶえ )  初夏

麦藁笛 ( むぎわらぶえ )   麦稿笛 ( むぎわらぶえ )

麦の茎で作った笛。柔い茎を三センチ程度に切って噛んで吹く、子供達の遊び道具。

草笛 ( くさぶえ )  三夏

草の葉をとり笛の如く鳴らす。子供の頃を思いおこさせる。

麦刈 ( むぎかり )  初夏

麦刈 ( むぎか ) る  麦車 ( むぎくるま )

五月末から六月上旬にかけ、田植に先立って時期は立春から数えて百二十日目頃に刈る。

麦扱 ( むぎこぎ )  初夏

刈り取った麦を扱いで、穂を落すことである。麦の穂は「 ( のぎ ) 」がついている。「 ( のぎ ) 」は 難儀 ( なんぎ ) で肌にふれると、チクチクする。今はコンバインを使う。

麦打 ( むぎうち )  初夏

麦叩 ( むぎたたき )   麦搗 ( むぎつ )   ( むぎ ) 殻竿 ( からざお )   麦埃 ( むぎほこり )   麦焼 ( むぎやき )
( ) ぎ落した麦の穂を打つ仕事これが「麦打」・「麦叩」・「麦搗」である。稲は ( ) げばすぐ ( もみ ) になるが、麦は穂のまま落ちるので、これを打って「 ( のぎ ) 」をとり、実を落す作業を「麦打」。 竿 ( さお ) ( きね ) で打つ「 ( むぎ ) ( ほこり ) 」を浴びて働く。今はコンバインで一貫作業。

麦藁 ( むぎわら )  初夏

麦稈 ( むぎわら )   麦藁籠 ( むぎわらかご )

穂を扱き落した「麦の茎」である。利用方法は帽子、玩具、ストローに役立つ。

動物

鹿 ( しか ) ( )  三夏

鹿 ( しか ) ( )   小鹿 ( こじか )   親鹿 ( おやじか )   鹿 ( しか ) ( おや )

五・六月頃生まれる。動物の子は皆可愛い。「鹿の子」は格別。「鹿の子」は夏、鹿は秋が季語。

時鳥 ( ほととぎす )  三夏

子規 ( ほととぎす )   杜鵑 ( ほととぎす )   蜀魂 ( ほととぎす )   不如帰 ( ほととぎす )   山時鳥 ( やまほととぎす )   初時鳥 ( はつほととぎす )

「初夏」に渡来。春の鶯 夏の時鳥。親鳥は子育てしない。鶯等に「托卵」する習性。秋は南方へ去る。

郭公 ( かっこう )  三夏

閑古鳥 ( かんこどり )
初夏に渡来。低い山の林に棲む。鳴き声は「カッコー」、子育てはせずに「 頬白 ( ほほじろ ) 」・「 葭切 ( よしきり ) 」に 托卵 ( たくらん ) する。

老鶯 ( おいうぐいす )  三夏

夏鶯 ( なつうぐいす )   老鶯 ( ろうおう )   乱鶯 ( らんおう )   残鶯 ( ざんおう )   鶯老 ( うぐいすおい ) ( )

夏の「鶯」をいう。「鶯」は夏になると山地へ帰って繁殖する。声は依然流ちょうで釣人や登山客の夏を楽しませる。

葭切 ( よしきり )  三夏

葭原雀 ( よしわらすずめ )   行々子 ( ぎょうぎょうし )   葭雀 ( よしすずめ )

「渡り鳥」、鶯より少し大きい。夏の沼や沢、川辺の葦の中に群棲する。うるさく鳴き ( さえず ) る。

植物

( しげり )  三夏

( しげ ) る  ( しげ ) み  茂山 ( もざん )

樹木の茂ったかたちをいう。草の茂ったのは別に「草茂る」。

若楓 ( わかかえで )  初夏

楓若葉 ( かえでわかば )   青楓 ( あおかえで )

「楓の若葉」の略。楓の芽が葉に育った時分。初夏風にゆらぐさまは清閑な趣。

葉柳 ( はやなぎ )  初夏

夏柳 ( なつやなぎ )

夏の日の柳をいう。幹を隠さんばかりに繁り垂れた様をいう。別の趣がある。

牡丹 ( ぼたん )  初夏

白牡丹 ( はくぼたん )   緋牡丹 ( ひぼたん )   牡丹園 ( ぼたんえん )  ぼうたん  深見草 ( ふかみそう )

中国からの渡来は八世紀。別格な品格。極大輪の豊麗な花は「花の王」と称されている。花期は五月初頃。名所は大和の長谷寺 大和の 當麻寺 ( たいまでら ) は名高い。

( たけのこ )  初夏

筝 竹の子 たかんな

地下茎から出る新芽がたけのこ。種類は多い。「孟宗竹」(たかんな)は晩春、「 淡竹 ( はちく ) 」は初夏、「 苦竹 ( まだけ ) 」は淡竹の後に出る。孟宗は味が良い。

夏蜜柑 ( なつみかん )  三夏

夏橙 ( なつだいだい )

暖地に栽培 寒さにも強い。橙より少し大きく皮が厚く、酸味が強い。庶民的な親しみ。産地は山口県の萩が有名。

行事食

( ちまき )  初夏

茅巻 ( ちまき )   粽結 ( ちまきゆ ) う 粽とく  飾粽 ( かざりちまき )   笹粽 ( ささちまき )   葦粽 ( あしちまき )   菰粽 ( こもちまき )   粽笹 ( ちまきささ )   巻笹 ( まきささ )

端午の節句に食べるもの。糯米や上新粉を水で練って、熊笹・菖蒲・茅の葉で包み、糸・藁・藺草で巻いてむしたり、煮たりする。包む物により、「笹粽」・「茅粽」・「葦粽」などの名称、形も三角形・ ( まゆ ) 形・ ( きり ) 形の名がある。地方により五月以外に食べる、山形、秋田では正月に食す。

中国の習俗で、 ( きべ ) ( ) に投じた屈原忌日が五月五日。屈原は人望の厚い人で身を投じた時民衆が魚の餌食にならぬように粽を投じた古事。

菖蒲酒 ( しょうぶざけ )  初夏

菖蒲の根を漬けた酒で邪気を払う。五月五日に飲むと最も効果があるとされる。

柏餅 ( かしわもち )  初夏

粳米 ( うるちまい ) の粉(上新粉)を水で練って作った餅に ( あん ) を入れて、柏の葉に包んでむした餅菓子。端午の節句に供える。「小豆餡」には柏の葉は表を出し、「味噌餡」には裏を出す。柏の葉は縁起物で新しい葉が出来てから古い葉が落ちる。代々と伝わる意。

柏餅は江戸時代初期から普及したものらしく、江戸では寛文頃(一六六一年)端午の節句に柏餅を贈物する風があった。京阪では初端午には粽を祝い、二年目より柏餅を贈る習慣がある。

筍飯 ( たけのこめし )  初夏

万人が好む季節の色ごはん。「筍飯」は下拵えをした孟宗竹を刻んで、味付けした汁で焚きこむ。粳米に糯米一割程加える。

筍の名産京都の白子筍は美味。昔の東京付近では目黒の筍飯が有名とか。

豆飯 ( まめめし )  初夏~

蚕豆 ( そらまめ ) 又は 豌豆 ( えんどう ) の莢から粒を出し焚込む、青々とした「豆の色を頂く」もの。季節と共に五~六月が美味。

麦飯 ( むぎめし )  初夏

米と大麦を混ぜて焚いた御飯をいう。「麦飯」というと貧乏暮しの連想が立つが脚気予防の健康食である。「新麦」は「麦秋」という季節と関係がある。麦飯の場合は水を多くする決まり。

麦飯の常食者は徳川家康・昭和天皇共に長寿。

新茶 ( しんちゃ )  初夏

( はし ) ( ちゃ )

立春から数えて八十八夜の頃より茶摘みが始まる。新しい芽を製したお茶を新茶という。香り味は格別で、珍重される。お茶の産地としては宇治・静岡が有名。量産順位は静岡・鹿児島・三重・宮崎・京都の順になる。

古茶 ( こちゃ )  初夏

陳茶 ( ひねちゃ )

今年できた新茶に対し、昨年できた茶のこと。

身欠鰊 ( みがきにしん )  初夏

加工品の一つで春三・四月の頃産卵のために沿岸に来るのを漁獲し、頭・内臓を去り、三枚に卸し二十日余り干して乾燥させたもの。

固いので戻すときは米のとぎ汁を用いる。今日ではソフト身欠鰊が主流。旧来の固いのは少ない。

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