歳時記 秋 十月

時候

十月 ( じゅうがつ )  晩秋

晩秋。秋深くなる月。山は紅・黄色の粧い、秋の実りと共に、夜の月光、空気は冷える。

長月 ( ながつき )  晩秋

菊月 ( きくづき )   ( きく ) ( あき )   菊咲月 ( きくさきづき )   季秋 ( きしゅう )   紅樹 ( こうじゅ )

陰暦九月の異称。

( あき ) ( くれ )  三秋

( あき ) ( ゆうべ )   ( あき ) のゆうべ 秋の 夕暮 ( ゆうぐれ )

秋の日暮をいう。

やや ( さむ )  晩秋

少し寒いと感じる程度→秋寒 寒さの感じ方にはいろいろ。「うそ寒」、「肌寒」、「そそろ寒」など。

朝寒 ( あささむ )  晩秋

人の息が白く見える程度。朝だけ「寒さ」を感じる。

夜寒 ( よさむ )  晩秋

夜だけ寒さを感じる。指先が冷える程度。

( ) ( ) む 三秋

秋も深まり、「寒さが身にしむ」を覚えること。

秋深 ( あきふか ) し 晩秋

深秋 ( しんしゅう )

秋たけなわの頃、秋が深まり、冬移らんとするころ。

行秋 ( ゆくあき )  晩秋

秋暮 ( あきく ) れ  ( あき ) ( わかれ )   ( あき ) 名残 ( なごり )   ( のこ ) ( あき )

秋が過ぎ去ろうとするのをいう。惜しむ心。

( くれ ) の秋 晩秋

秋の末をいう。

霜降 ( そうこう )  晩秋

陽暦十月二十三日頃、露が冷気になって「霜」となり、降りはじめるころ、二十四節気の一つ。

秋寂 ( あきさ ) び 晩秋

晩秋の風物を、深秋の風物を、「わびしい」と思いつつ眺めた時の感じ。

晩秋

暮秋 ( ぼしゅう )   ( くれ ) ( あき )

秋季の終りのころをいう。

秋惜 ( あきおし ) む 晩秋

仲秋と同じ、秋のすぎさまを「惜しむ」こと。

天文

( あき ) ( )  三秋

( あき ) 朝日 ( あさひ )   ( あき ) 夕日 ( ゆうひ )   ( あき ) 入日 ( いりひ )   ( あき ) 日影 ( ひかげ )

「秋の一日」をいう。晴日に使われる。

秋晴 ( あきばれ )  三秋

「秋日和 ( びより ) 」と同じ。秋晴の空。

秋髙 ( あきたか ) し 三秋

天髙 ( てんたか ) し  空髙 ( そらたか )

秋は空が澄み、雲もなく、空が高く感じる。晩秋最もこれにふさわしい。

( あき ) ( そら )  三秋

秋空 ( あきぞら )   ( あき ) 大空 ( おおぞら )   秋天 ( しゅうてん )

長閑な秋の空、「赤とんぼ」が似合う。一年中のうちで、「空が澄んで」一番美しい。

( あき ) ( くも )  三秋

四季の雲には特徴がある。春→浮ぶが如く。

夏→入道雲の如く。いかめしく。秋→すがすがしい。冬→暗く閉じるが如く。

秋風 ( あきかぜ )  三秋

( あき ) ( かぜ )   金風 ( きんぷう )  風の ( さわや )

「秋は西より吹く」、「春は朝に寒く、秋風は夕に寒し」、晩秋の風はどこかものさびしい。

( あき ) ( こえ )  三秋

秋声 ( しゅうせい )

全く主観的なもので、「心で感じる」さまをいう。

( あき ) ( あめ )  三秋

秋雨 ( あきあめ )   秋霖 ( しゅうりん )   秋湿 ( あきしめ ) り  秋黴雨 ( あきついり )

秋に降る雨。強く降る雨、小雨が静かに降るにしても、冷たく暗いものである。長く降るのを「秋霖」、「秋黴雨」。

( のち ) ( つき )  晩秋

十三夜 ( じゅうさんや )   ( つき ) 名残 ( なごり )   名残 ( なごり ) ( つき )   二夜 ( ふたよ ) ( つき )  豆名月 栗名月

陰暦九月十三日の月。供え物は、名月と同じもので団子は十三ケと新大豆・栗など。後の月を愛でるのは我国のみ、昔から、十五夜・十三夜の両日晴れると、明年は豊作と縁起をかつぐ。

秋時雨 ( あきしぐれ )  晩秋

冬が近づく頃、空は晴れているのに、急に雨が降る、間もなく止み晴れるさま。

露霜 ( つゆしも )  晩秋

水霜 ( みずしも )

晩秋の露が凍って、霜となろうとする直前の露のこと。

( あき ) ( しも )  晩秋

「霜」は冬に降るのが普通。北国では晩秋に「初霜」を見ることがある。

地理

( あき ) ( やま )  三秋

山粧 ( やまよそ ) ふ  ( あき ) ( みね )

秋の山、晩秋全山紅・黄葉する。春は山笑う。夏は山滴る。秋は山粧う。冬は山眠る。

秋の野 三秋

野草は初秋に花が咲き、晩秋には実を結ぶ。秋風が吹き渡り、虫が鳴くのが「秋野」。

( あき ) ( )  晩秋

稲穂が ( ) れ、黄金色に色づいた田をいう。

( おと ) ( みず )  晩秋

稲刈りを始める前に、水を落して田を乾かすことをいう。

( あき ) ( かわ )  三秋

秋になると水が澄む。晩秋色づいたもみじが川に落ち流れるさまは、「秋の川」の絵。

刈田 ( かりた )  晩秋

稲が刈りとられて、切株ばかりならんだ田。

穭田 ( ひつじた )  晩秋

刈田の株から、新しい茎が生ずるのを穭田という。

生活

案山子 ( かかし )  三秋

稲の実の頃に、田圃に人の形をしたものを立て、鳥を威すのが「案山子」。その内鳥もなれて驚かなくなる。

鳴子 ( なるこ )  三秋

鳴竿 ( なるさお )   鳴子綱 ( なるこつな )   鳴子引 ( なるこひき )   鳴子番 ( なるこばん )   引板 ( ひきいた )

収穫の折、雀を追いはらう、小形の板に竹管を並べ糸でくくって作る。田圃に竹を立て、これを鳴子にかけ糸を引けば、鳴子が鳴る仕組み。音がなり鳥は四散する。

鳥威 ( とりおど ) し 三秋

田を守るのが「案山子」。畑を守るのが「鳥威し」の役目である。鳥の ( しかばね ) の首、手羽など吊るす。他に軽金属の糸をつける。紙張りの凧型の両端に長い糸をつけ宙吊りとし、風の吹くままゆらぐように仕掛けるなどいろいろ。ききめはのろし。威銃を発砲する。

鹿垣 ( ししがき )  三秋

鹿が田ばたを荒しに来るのを防ぐため、竹や材で垣を作る。

鹿火屋 ( かびや )  三秋

山深い里で小屋を作り、猪、鹿など田畑を荒すのを防ぐため、夜を徹して火を焚き、 銅鑼 ( どら ) を打ち鳴らしたりするのをいう。

豊年 ( ほうねん )  晩秋

出来秋 ( できあき )   ( とよ ) ( あき )

穀類の多くできた秋を「豊年」という。 五穀豊穣 ( ごこくほうじょう )

毛見 ( けみ )

検見 ( けんみ )  毛見の ( しゅ )  毛見の ( まいな ) い  坪刈 ( つぼかり )

昔、役人が稲田の出来、不出来を検査して歩くことをいう。「毛見」の意向によって年貢が定められた。一坪だけ刈って推測するのを「坪刈」という。

( くだ ) ( やな )  三秋

春は ( のぼ ) り簗、秋は下り簗。主に鮎を獲る。他には 山女魚 ( やまめ ) ( はや ) ( こい ) など。

松手入 ( まつていれ )  晩秋

十月頃に松の手入をする。 ( はさみ ) を入れ、風通しをよくする。

秋祭 ( あきまつり )  三秋

( むら ) 祭  ( さと ) 祭  ( ざい ) 祭  ( うら )

秋季に行われる神社の祭礼。澄んだ空の下で収穫に感謝し、氏子総出で喜び合う。祭り本来の姿。

重陽 ( ちょうよう )  晩秋

重九 ( ちょうきゅう )  重陽の ( えん )   ( きく ) 節句 ( せっく )  菊の ( )   菊水 ( きくすい )   菊花宴 ( きくかえん )  菊の ( えん )   菊酒 ( きくざけ )   ( くり ) の節句

五節句の一つ。陰暦九月九日、九は陽数で九が重なることで「重陽」、「重九」となる。「菊花の宴」では菊の香を大切に仕立てる。吸物・ ( あつもの ) ・お ( ひら ) ・むし物・ ( なます ) と菊の料理多である。

菊枕 ( きくまくら )  晩秋

野菊の花を摘んで、よく乾かしこれを入れて作った枕。匂いが良く、頭痛によいという。

「菊」は不老長寿をもたらす。

海蠃 ( ばい ) 廻し 晩秋

べいごま 海蠃 ( うつ )   強海蠃 ( つよばい )   勝海蠃 ( かつばい )

童の遊びで明治・大正・昭和と子供達はみんな熱中したもの。今は廃れてしまった。「バイ貝」を半分位から切り、その中に鉛やロウを流し 独楽 ( こま ) を作り、 ( たらい ) を据え厚い布を張り、そこで独楽を廻す。今日では鉄製が主流。昔は九月九日、重陽の日の遊びもの。

菊人形 ( きくにんぎょう )  晩秋

菊の形で衣裳を作った人形。明治から大正時代の始めにかけて本郷の団子坂が有名であったが、やがて国技館に移るがすたれる。関西では枚方が有名だが昔ほどでないとか。時と共に名所も変る。秋田の横手、宮城の船岡、東京は新宿御苑などが有名。

( きぬた )  仲秋~

( きぬた )   砧打 ( きぬたう ) つ  衣打 ( ころもう ) つ  砧盤 ( きぬたばん )   砧槌 ( きぬたづち )   昼砧 ( ひるきぬた )   夕砧 ( ゆうきぬた )   砧拍子 ( きぬたびょうし )

今は見られない。紡績糸が普及したお蔭である。昔の衣服は ( あさ ) ( くず ) ( こうぞ ) などの繊維を利用し、むして、さらして、織って衣服を作った時代。固いために叩いて軟らかくして着用する。砧はけやき、台はマツ、スギ、ヒノキの切株、砧打ちは女性の仕事。農家では藁打ちに「砧」を使用する。

初猟 ( はつりょう )  晩秋

猟銃の解禁十一月一日(北海道は十月一日)、この日に出かけるのを「初猟」という。夜明を待って猟をする。

小鳥網 ( ことりあみ )  晩秋

小鳥狩 ( ことりかり )   霞網 ( かすみあみ )  かすみ ひるてん  ( おとり )   媒鳥 ( ばいちょう )  囮 ( ばん )  囮 ( もり )

秋に北から渡って来る小鳥を捕えるために設ける「網」をいう。網の下には囮を置いて誘いよせる。「霞網」を張った傍には「鳥座」が設けられ、戦前まではっ盛んに行われた猟法。戦後は禁止されている。

( おとり )  晩秋

小鳥を捕える時の 媒鳥 ( ばいちょう ) 。囮が鳴いて他の鳥が寄ってくる。

神嘗祭 ( かんなめさい )  晩秋

十月十七日、伊勢神宮に於て、天皇から天照大神に新穀で作られた神酒と 神饌 ( しんせん ) を奉献される御祭儀。祭儀は十月十六日に外宮、十七日に内宮で行われる。戦前は国の祝日と定められていた。

べったら ( いち )  晩秋

べったら市  浅漬市 ( あさづけいち )

十月十九日の夜、日本橋の大松大松大伝馬町、小伝馬町に立つ、この年の大根を 糀漬 ( こうじづけ ) にしたもの。昔は恵比寿講の前夜に、今は浅漬け大根の市だけとなった。

夷講 ( えびすこう )  晩秋

夷子講 ( えびすこう )   夷子祭 ( えびすまつり )  えびすこ 夷子 ( ぎれ )

十月三十日、商家では商売繁盛を祈って恵比須神を祭る。商いの神、東日本では鮒を供える、関西では正月十日、「十日 ( えびす ) 」がにぎわう。

薬掘 ( くすりほ ) る 三秋

薬採 ( くすりと ) る  苦参引 ( くららひく )   茜掘 ( あかねほ )

茜(止血薬・染料)野生の薬草の根を採る、その根を持帰って薬をつくること。

茜掘 ( あかねほ ) る 三秋

山野に出て茜を掘り取る。根は止血薬・染料にもなる。

千振引 ( せんぶりひ ) く 三秋

当薬ともいう。山に多い草で二十五センチ程。秋に成熟した時に引き、干して置く。千回煎じても苦いというところからの名前。当薬とはよく病気に当る・治る意味。健胃剤、駆虫剤にする。

野老掘 ( ところほ ) る 三秋

山野に自生、根はヒゲが多く苦い。晩秋に掘り取る。薬用にもするが、新春の飾りとし「長寿」を意味する。

綿取 ( わたとり )  晩秋

綿の ( もも )   桃吹 ( ももふ ) く 綿ざね 綿 ( ) む 綿 ( ) す 綿初穂 ( はつほ )  綿 ( かう )  綿 ( くるま )  綿 ( くり )  新 真綿 ( まわた )   ( しん ) 綿 にいわた  今年 ( ことし ) 綿 綿 ( ゆみ )

収穫は九月~十一月まで、球形の「綿」の実がはじけて白い毛状の繊維が現われる。それを摘み取って「綿」を作る。晴天の日に行う。

新綿 ( しんわた )  晩秋

当秋に収穫した綿をいう。「綿打」の季語は冬である。

秋耕 ( しゅうこう )  三秋

「耕」といえば季語は春になる。「秋の収穫後に耕す」ことをいう。

紫雲英 ( れんげ ) 蒔く 晩秋

「れんげ」ともいう。田の肥料として蒔く。春に見事な「げんげ田」となる。その後耕す。

蘆刈 ( あしかり )  晩秋

蘆は屋根を ( ) くのに用いる。晩秋(十)~初冬(十一)にかけて各地で刈こみを行う。

( かや ) ( ) る 晩秋

萱葺屋根 ( かやふきやね ) を葺くのに用いるもの。萱とはススキ、 千茅 ( ちがや ) ( すげ ) の総称で「萱」という植物はない。晩秋、成熟して黄色くなった時分に刈りとり、乾かして用いる。

木賊刈 ( とくさか ) る 晩秋

「木賊」は二尺ぐらいに伸び青々とし美しい。坪庭などに植えてある。秋に黄ばる頃刈る。表面が堅く乾燥させ、木や竹細工などの研磨に使用する「 ( ) ( くさ ) 」。

萩刈 ( はぎかり )  晩秋

晩秋、根を強めるため、花が終って後に、刈ること。

火祭 ( ひまつり )  晩秋

十月二十二日、京都鞍馬の由岐神社の神事。「鞍馬火祭」。山道に 篝火 ( かがりび ) と松明の火。

稲刈 ( いねかり )  晩秋

田刈 ( たかり )   陸稲 ( おかぼ ) 刈  収穫 ( とりいれ )   秋入 ( あきい ) り  稲束 ( いなたば )   稲舟 ( いなふね )   稲馬 ( いねうま )   稲車 ( いなぐるま )   稲干 ( いねほ ) す  刈干 ( かりぼし )  稲 ( ) ( )   稲木 ( いなぎ )   稲架 ( はざ )

田の水を抜き、秋晴に稲を刈る。鎌の音が爽やかに響く、稲刈りの風景、情景がコンバインによって消された。

稲架 ( はぎ )  晩秋

稲掛 ( いなかけ )   掛稲 ( かけいね )

刈った稲をかけて乾すもの。田の中、 ( あぜ ) を利用して太い杭を組み「稲」を掛ける。

稲扱 ( いねこぎ )  晩秋

稲扱きには「せんば」金の歯の澤山並んだのにひっかけて ( しご ) く方法と、稲扱器を使用する方法がある。一九六五年(昭和四十年)頃までであろうか。後にコンバインが主流となる。

( もみ )  晩秋

刈り取った稲を、せんば・稲扱器で扱いたもので、殻を取らないものを「籾」という。

籾磨 ( もみすり )  晩秋

籾を玄米にするため、 磨臼 ( すりうす ) にかけて、籾殻を除いた。脱穀機が普及する以前は大変な労力であった。

新藁 ( しんわら )  晩秋

今年藁 ( ことしわら )

稲扱をした 稲稈 ( とうかん ) は、少し青味が残って美しい。いい藁は干し、 ( はかま ) を去り、 草履 ( ぞうり ) ( なわ ) などに利用。

藁塚 ( わらづか )  晩秋

藁堆 ( わらにお )

新藁は積んで乾かす。刈田の空地などに積み上げる。円形あり、四角形ありと草塚の形は地方によりいろいろ。

冬支度 ( ふゆじたく )  晩秋

寒さが増す頃になると漬物を漬け、薪を割り、蒲田の打直し、障子貼り、など冬支度に入る。

障子洗 ( しょうじあら ) う 晩秋

障子貼る 障子の 貼替 ( はりかえ )

障子を張り替えるために、川・沼など利用し、障子を浸した後、藁を束ねて洗う。

障子 ( ) る 晩秋

洗った障子を干し、張り替える。

( はぜ ) ちぎり 晩秋

( はぜ ) の実は 和蠟燭 ( わろうそく ) の原料になる。実は径八~十ミリ、十月下旬頃熟すると光沢のある乳白色になる。実の垂れる姿は風情がある。「櫨の実ちぎり」は農家の収入源。

種採 ( たねとり )  晩秋

春蒔く草花の種をとる。朝顔、 鶏頭 ( けいとう ) など、とり袋に入れ、乾燥し、春蒔のために貯えて置く。

紅葉狩 ( もみじかり )  晩秋

紅葉 ( )  紅葉 ( さけ )  紅葉 茶屋 ( ちゃや )  紅葉の ( ふね )  紅葉の 小舟 ( こぶね )  紅葉の 御舟 ( みぶね )

紅葉を尋ねること。紅葉の下をゆっくりとした足どりで散策すると心落ち着く。

( くず ) ( やな )  晩秋

簗の 崩壊 ( ほうかい ) したもの。落鮎がすぎる頃には簗もくたびれ、次第に崩れてゆくさま。下り簗。

葛掘 ( くずほ ) る 晩秋

「葛粉」(本葛)を取るため葛の根を九月から翌年二月頃まで掘る。葛粉には澱粉が多い。高級和菓子、高級料理に使用する。吉野に産するのが良質。「葛」は捨てるところなし。葉は乾燥して家畜に、 ( つる ) は盛夏の衣料に用いる。

動物

稲雀 ( いなすずめ )  三秋

稲が実り刈り取るまで毎日群をなし、稲田に来ては「 ( ついば ) む雀」をいう。案山子、鳴子にオドオドしながら、追われても、やってくる。

( わた ) ( どり )  晩秋

秋になると「冬鳥」(カモ、ガン、白鳥・他)は北国から我国に飛んで来る。「夏鳥」(ツバメ、カッコウ、オオルリ・他)は繁殖を終え、秋には暖かい南国へ帰る。いずれも群をなして「渡る鳥」をいう。

( はち ) ( )  晩秋

古い時代から貴重な蛋白源。クロスズメ蜂などの幼虫。長野・岐阜各県の名産。アフリカ・アジア・南米でも食用。

植物

紅葉 ( もみじ )  晩秋

黄葉 ( もみじ )   ( もみじ )  もみじ ( )   妻恋草 ( つまこいぐさ )   竜田草 ( たつたくさ )   色見草 ( いろみくさ )   紅葉 ( もみじ ) ( かさ )   ( こずえ ) ( にしき )

晩秋霜が降りると落葉樹の葉は紅や黄に彩られる。中でも楓は見事な色を呈する。「妻恋草」「竜田草」「色見草」等はむかし使われた別称。

照葉 ( てりは )  晩秋

照紅葉 ( てりもみじ )

晴天のときの形容。紅葉した草木の葉が美しく輝いているのをいう。

銀杏散 ( いちょうち ) る 晩秋

「銀杏」の葉は厚く重い。空は日毎澄んでいく、落葉がはじまると「短靴」を埋めてしまうのも早い。銀杏化粧も美しい。

落穂 ( おちぼ )  晩秋

落穂拾 ( おちぼひろい )

稲刈りの後田圃に落ちた「落穂拾い」は子供の仕事。「落穂拾い」は想い出が深い。

吾亦紅 ( われもこう )  晩秋

バラ科の多年草。高原や山地に多く見かける。「吾赤紅」は細く長く、枝の先に円筒形の桑の実に似た花。吾赤紅は晩秋の趣を深く感じる。

行事食

松茸飯 ( まつたけめし )  仲秋~晩秋

「松茸めし」は開きを用いる。開きは香が高い。新米に「松茸飯」とは贅沢と思いきや、昭和初期には一膳飯屋(大衆食堂)などでは眞先に出るとある。多く採れたのであろう。当時椎茸のほうが高価。

新米 ( しんまい )  晩秋

今年米 ( ことしまい )   早稲 ( わせ ) ( めし )

今年収穫した米。「新米」と聞くだけでうれしいもの。焚き上ったご飯に感謝し、東の方角に向って手を合せる。焼き塩を振り、一口目は香りを頂き、ねばりと口ざわりを楽しむ。

焼米 ( やきごめ )  晩秋

稲を鎌で刈っていた時分、稲を運んだ後で、子供達が落ち穂拾いをする。それを持帰って 囲炉裏 ( いろり ) の周囲に置くとポンとはぜる。はぜたお米は旨い。子供の頃の記憶今も残っている。 ( もみ ) のまま炒って焼米を作る。子供のおやつ。

新酒 ( しんしゅ )  晩秋

今年酒 ( ことしざけ )   早稲酒 ( わせざけ )   利酒 ( ききざけ )   新走 ( あらばしり )

新米で醸造した酒。昔は米の収穫後、醸造したもので「新酒」を秋の季語ととどめて置く。今は冬季に入ってからの「寒造り」が主である。

新豆腐 ( しんどうふ )  晩秋

新しい大豆は晩秋⑽から初冬⑾にかけて収穫する。その大豆で作った「豆腐」をいう。

古酒 ( こしゅ )  晩秋

新酒に対して前年に造った酒のことである。新酒が出ない間は古酒という感じは起らない。古酒から「煎り酒」をつくる。古酒に梅干と昆布を入れ火にかける。煎り米を入れても良い。上品な調味料が出来る。昆布〆に掛ける。

濁酒 ( にごりざけ )  晩秋

醪酒 ( もろみざけ )  どぶろく  神代酒 ( じんだいしゅ )   諸白 ( もろはく )   中汲 ( なかく )

清酒に対する名前で、発酵したままの酒、白く濁って味も強く深く酔う。臭みもある。

( つる ) ( がき )  晩秋

干柿 ( ほしがき )   白柿 ( しろがき )  ころ柿  甘干 ( あまぼし )   串柿 ( くしがき )

色づいた渋柿の皮を剥いて縄やひもに十個程くくり干す。寒風に当ると色が変る。真白に白粉が吹くものから、茶褐色・黒褐色などさまざま。食べる時に両手で揉むとよい。

菊膾 ( きくなます )  晩秋

阿房宮でも「蔵王菊」でもよい。菊の香りは高い。花弁をむしる。花芯は苦味が強いので捨てる。酢を入れて茹で、水に落し絞って、三杯酢、淡い甘酢にとるのが「菊膾」である。「もって菊」も同様にするとよい。但し色落ちが早いので早く使うこと。鷹の爪は種を取る。

( あたた ) ( さけ )  晩秋

陰暦九月九日から酒を温める。温め酒を用いれば病無し。虫の声と共に寒さが感じられる。願ってもない。長寿の薬。

牛蒡引 ( ごぼうひ ) く 三秋

牛蒡 ( )

牛蒡の根は深い ( すき ) で掘り出すことは熟練を要する。これを牛蒡引くという。今は動力を用いて掘り起こすと聞く。

零餘子飯 ( むかごめし )  晩秋

零餘子(長薯や 自然薯 ( じねんじょ ) 葉腋 ( ようえき ) に出る肉芽)を入れて焚きこんだ飯で、野趣味がある。

新蕎麦 ( しんそば )  晩秋

この年の秋に収穫した「蕎麦粉」で打った「蕎麦」を「新蕎麦」という。産地は信州・山形・岩手などが有名で、この時期には「新蕎麦」の旗がなびく。

猿酒 ( さるざけ )  三秋

猿が作った酒と伝えられているが、疑わしい話であるが、言葉だけ記憶するのも夢がある。献立の余白に加えるのも楽しい。季語遊び。

栗飯 ( くりめし )  晩秋

大きいのは「丹波栗」、小さいのは「山栗・柴栗」である。外皮と渋を剥き、新米で焚いた「栗ご飯」は食欲が出る。黒の胡麻塩をかけて頂く。又粋な「栗ご飯」は焼栗にし、外皮と渋皮を取り新米に戻し昆布を差して炊く。こうばしい香りがただよう。

柚味噌 ( ゆみそ )  晩秋

柚釜 柚味噌釜

「柚みそ」は元来、柚子の中をえぐり出し、そこに味噌をいこみ火にかけて、なめ味噌とした。祇園の茶店の「関東屋」が作ったのが始めとか。利休も秀吉に作ってもてなしている。又は白味噌に酒・味淋・砂糖・練胡麻・卵黄を加え火にかける。柚子の皮は卸して加える。

田楽・風呂吹き、なめ味噌によい。

柚子は日本二大香料の一つ、他は木の芽(山椒)である。

菊酒 ( きくざけ )  晩秋

菊花 ( きっか ) ( さけ )   菊酒 ( きくざけ )

陰暦九月九日重陽の節句、祝宴の折、盃に花弁を浮べて飲めば「長寿延命」との言い習わし。中国では陽数(奇数)の極みである九が重なることから「重陽」といわれ、特別にめでたい日とされた。この習慣が日本に伝わり、平安時代最も盛んであった。祝宴に供する物。

茸狩 ( きのこがり )  晩秋

( きのこ ) とり  茸狩 ( たけがり )   茸筵 ( たけむしろ )   茸籠 ( たけかご )

「茸」の種類は多い晩秋の山はきのこ採りでにぎわう。目的は松茸、しめじ、なめこ、舞茸など。松茸は赤松の山。籠を肩にかけ探す楽しみが茸狩り。

魚腸 ( うるか )  晩秋

わたうるか にがうるか しぶうるか

アユの内臓を用いた塩辛で、味は苦いが風味があり酒の肴としての珍味。岐阜県長良川の名産。地方では酒盗と呼ぶ。

裂膾 ( さきなます )  三秋

「鰯の膾」のことで小骨が多いために刃物を用いずに指で裂いて調理する。上身に塩を当て酢でしめて膾にする。酢味噌・辛子味噌が良く合う。秋が美味。

鱲子 ( からすみ )  晩秋

「ボラの卵巣」を塩漬けし乾燥したもので肥前(長崎) 野母 ( のぼ ) が有名。「からすみ」はその形が唐墨に似ているところから生じた名称。日本の三大珍味の一つ。

焼味噌 ( やきみそ )  晩秋

ご飯の菜・酒の肴にも向く料理で味噌に葱、生姜、胡麻など好みのものを入れ砂糖を加え混ぜ、帆立の貝・杉板・昆布に塗って炙ったもの。

薯蕷汁 ( とろろじる )  晩秋

とろろ 薯汁 むぎとろ

「とろろ汁」は「 自然薯 ( じねんじょ ) 」・「 大和薯 ( やまといも ) 」(三重県の伊勢薯。兵庫県の丹波やまの薯)、「 銀杏薯 ( いちょういも ) 」(関東地方で栽培)のコシの強いイモを用いる。皮をむき擂り鉢で卸し、味噌汁の上澄み、出汁でのばし味を整える。麦飯にかけて召し上がる。麦とろ。

( くり ) 子餅 ( こもち )  晩秋

「栗の粉」を混ぜて作った餅、「栗の粉」をまぶした餅をいう。

柿羊羹 ( かきようかん )  晩秋

朱色をした美しい羊羹、柿を加えて練ったもの。広島が名高い。

柚餅子 ( ゆべし )  晩秋

柚子の加工菓子。柚子の上部を切り、中の身を取り出し、その中に米粉・味噌・砂糖をねり混ぜて ( かや ) の実を入れ蒸して、陰干にして薄く切ったもの、好みで生姜、 胡桃 ( くるみ ) 、ピーナツなども入れる。

今風では、求肥に柚子の香りと胡桃などを加え「ゆべし」の名で売られている。

酢造 ( すつく ) る 三秋

昔、農家では自家用で「米酢」を作った。新米を醸造する、壺に入れ醸し、布で漉して作った。今はしない。

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